「国家を考えてみよう」を読む

橋本治の「国家を考えてみよう」橋本治らしい鋭い視点が、たゆたうような文章のなかに散りばめられている。民主主義と独裁のような国家主義の違いが丁寧に説明され、民主主義は国家主義に移行しやすいことが語られる。ヒットラーが民意によって選ばれて、国家主義になっていった過程も説得力がある。

 

小池都知事が誕生した背景にぴったりなのも落ち着かない気分にさせられる。地方自治体の首長は直接選挙なので、民意で選ばれたということになる。小池氏もそれをさかんに強調している。それが議会と対立したとしても、大義名分になるのだ。

 

橋本治が言う「議会と対立するリーダーの行動は、国家主義に簡単につながる」、という状況は、まさに今日現在の東京の状態。小池氏は議会との融和を目指しているようだが、議会側がどのように対応するのか。一気に体制が代わることはないだろうが、民主主義も資本主義も絶対ではなく、今世界中が行き詰っている中で、危うい芽があることを忘れてはならないと思う。