「アガーフィアの森」を読む

宗教的な信念に従って、シベリアの森の中で家族だけでくらしていた人々の記録。最後は女性アガーフィア1人になってしまうが、「俗世」と繋がりがあるのに一人で森で暮らすことを選択した。繋がりがあるといっても、気軽に行き来できる距離ではなく、自給自足、着るものも住まいも、畑を開くことも、獣をとることも何もかもを自分でこなす。正確に暦を理解することも。

 

その信仰の強さ、どんなに便利なものも宗教的に「禁じられている」ということで遠ざける意志はどこからくるのだろう。

 

だからといって、新しいものを頑なに拒否することはなく、飛行機や汽車に乗ることやテレビもすんなりと受け入れる。その柔軟な感性とゆるぎない信仰のタブーとの両立する心が印象的だった。迷いはなかったのだろうかと俗人の私は思ってしまう。本の中からはその迷いはまったく感じられなかったが・・・。

 

また森の中に隠れ住む中で、4人の子供にきっちり読み書きを教えたアガーフィアの母親にも圧倒される。

 

アガーフィアは1945年生まれだそうだから、同時代を生きている不思議。強烈な信仰心を持ち合わせない私には理解できない心情だが、それでもアガーフィアは魅力的な存在。彼女に接した人たちはみなそう感じたのではないだろうか。