働きたくないイタチと言葉がわかるロボット

 

イタチ村のイタチが「何でもできるロボット」を作って、遊んで暮らそう、というところから始まるお話。

 

  働きたくないイタチと言葉がわかるロボット

    サブタイトルは「人口知能から考える「人と言葉」」

 

人口知能は何ができるかを順を追って説明されているのですが、それではもちろん素人には訳が分からず。素人の立場のイタチがモグラやふくろうなどの開発した機械を改善させられる中で、人工知能がどのように言葉や思考を獲得していくかが語られるのです。

 

 

イタチたちは「痛見(イタミ)温泉」に団体旅行に出かけたり、イタチに騙されたと思った動物たちが「イタチ村被害者の会」を作って、イタチをつるし上げたりと、お話は進みます。

 

ちょっと訳がわからないなあ、と思うと、イタチたちもやはり訳が分からず、適当にことをすすめてトラブルを巻き起こす。動物たちのお話の間に、その話に基づくコラムのような形で、いかにコンピュータに言葉を学習させるかが少しずつ説明される。

 

どのようにデータを入れると正しい答えが出るか、間違った答えはなぜ起こるのか

などが具体的に示される。AIだ、ディープラーニングだといっても、そうは簡単にはコンピュータは言葉の学習はできない。

 

そしてなんといっても驚きなのは、コンピュータに50万語を入れて学習させてもなかなかうまくいかないことが、人間の赤ちゃんはもっと少ない語彙の中で、多様な言葉の使い方を身につけていくということ。

 

私たちが無意識に思っていること、知っていることが、コンピュータにはいちいち説明してやらないとならない。AIはさらに発展していくでしょうが、その中で人間が言葉を獲得していく仕組みもさらに分かってくるのかもしれない。

 

切り絵版画風の挿絵も楽しい。難しい内容の割には面白楽しく読めました。